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プリズムとは
「プリズム」という言葉、耳にしたことのあるかたは少なくないと思います。
ここでは眼鏡店やメガネで使われるプリズムについて少し解説をします。
この塊というか、レンズなんですけれども、これがプリズムです。
プリズムには、光の進路を屈折させる性質があります。
光には「直進する」という性質がありまして、たとえばレーザーポインタを照射すると、通常は真正面に赤い光が投影されるわけですが、
レーザーポインターの前にプリズムを置くと、赤い光の投影される位置がずれてしまいます。
位置がずれる方向は、プリズムの厚みが大きい方向に一致します。
この位置がずれる方向=一番厚みのある方向を「基底」とか「BASE(ベース)」と呼びます。
この性質を利用して、より快適な視機能・視環境を提供させるため、プリズム作用を組み込ませた眼鏡レンズをお客様にご提案する場合があります。
プリズムの量を測ったり、プリズムを装用した状態での視機能をチェックしたりするために、当店ではこんな小道具を用意しています。
●冒頭に出てきたプリズムの塊「ルースプリズム」
●水平方向や垂直方向にプリズムが段階的についている「プリズムバー」
●お試し用のフレーム(仮枠)に取り付ける「トライアルプリズムレンズ」
●プリズムが組み込まれた「ターレット式検眼器」
プリズムの強さはプリズムジオプトリー(Δ)を用いるのが一般的です。
1Δ(1プリズムジオプトリー)というのは、1メートルの距離で像の距離を1センチずらすパワーを持ちます。
眼科関係で「プリズムジオプトリー」の代わりに「度」を使うこともありますが、「1度」と「1プリズムジオプトリー」は、同じ量にはなりませんので換算する必要があります。
「プリズムジオプトリー」と「度」との関係はというと、
1Δ=4/7度(約0.57°)
1度=約1.74Δ
となるようです。
稀に、「1プリズムジオプトリ―」の意味合いで「1度」と表現しているように見受けられることがあります。
これは正しくありませんし、混乱を招くので慎んでほしいところですが・・・
また、「4Dのプリズム」といったように「ジオプトリ―(D)」で表すのも誤りです。
ジオプトリ―は、近視・遠視・乱視といったレンズの度数、すなわち「屈折力」を表す単位であり、
「レンズの焦点距離の逆数」になりますので、「プリズムジオプトリー」とは意味するものが全く違います。
プリズムレンズはプリズム量が強くなるにしたがって、特に基底方向において、レンズが厚くなっていくのが欠点です。
下の画像は、プリズム量でいうと25プリズムジオプトリ―に相当するルースプリズムです。
こんな分厚いレンズをフレームに組み込むのは、見栄えがあまりよくありません。
そもそも、これくらいのプリズム量になると、眼鏡レンズとして製作してくれるレンズメーカーさんは国内では私は存じ上げません。
ただ、これくらいの、あるいはもっと強いプリズムを必要とされる場合もありまして、そんな場合は眼鏡レンズに張り付けるタイプのプリズムが必要になります。
フレネルプリズムと呼ばれることの多いものですが、ご覧のようにペラペラの膜状になっています。
これで25プリズムディオプターの効果があるのです。
よく見てみると、三角形の形をしたプリズムが並んでいます。
フレネルプリズムのおかげで、かなり強いプリズム量まで対応はできるのですが、プリズム量が強くなるにしたがって、視界がぼやけてしまう(装用視力が低下してしまう)という欠点があります。
●フレネルプリズム非装用時の見え方
●片眼に4Δ装用
●片眼に8Δ装用
●片眼に12Δ装用
この欠点を踏まえた上で、たとえば、使用中のメガネの上に貼り付けることでプリズムの効果を確認したり、レンズの耳側3分の1とか下半分など部分的に貼り付けてみたり、必要に応じて使用をします。
さて、このように説明していくと、プリズムというのは、ものすごく特殊なレンズのような印象を
受けられるかもしれませんが、決してそんなことはなく、メガネを掛けている皆さんにとっては、
無縁のものではないのです。
細かいことは割愛しますが、単焦点レンズには「光学中心」という、光学的な中心位置がありまして、
この位置であればプリズム作用は「ゼロ」です。
しかし、同じレンズでも、光学中心からずれればずれるほど、プリズム作用が発生します。
したがって、ごく普通のメガネであっても、光学中心以外の場所に視線が通れば、大なり小なりプリズム作用が発生していることになります。
たとえば、遠くを見ているときはプリズム作用はゼロでも、読書をしているときにはプリズム作用が生じているわけです。
(どの程度のプリズム作用が生じているかは、度数の強弱と、光学中心からの距離によります。)
ただ、それでも大多数の人にとっては支障がありません。
そうでなければ、だれもメガネを掛けられませんよね。
(左右の度数差が大きい場合など、中には、支障が出るかたもいます。)
ですから、「プリズム入りのメガネ」というのは、ある距離を見たとき・ある角度を見たときなどに、
必要なプリズム効果が得られることを狙ったメガネということで、その人が快適にメガネを掛けられるように、プリズム量をコントロールすることがメガネを調製していく上で大事である、と言えるかもしれません。